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◆ 第7回 主なテーマ 材の話

この日のテーマは材の話を中心にということで、ギターを並べ、それを肴にしながら話が進んだ。
「ま」は木材の資料、写真など持参。今回は写真も多用したいという事で、写真撮影の間、ロマニロス工房に学んだ新進の佐久間悟を試奏。「ま」「さ」の感想、音離れがよい、新人の作品ながらこのギターからは音楽をする歓びが伝わってくる、次の作品の完成は秋口との事、待ち遠しいかぎりである。

1980年、セゴビア・コンクール優勝の伝説の堀内さんの話題から、岩永さん、稲垣さん、福田さんなどなど、1970年代、ギタリストの 国内分布は西高東低であったという話。その中で九州の山下(和仁)さんは大阪を通り越して東京のコンクールを受けた。60年代のホセ・ラミレスを下げ て・・・という話題から

山下さんはラミレスをいくつか持ちかえてきているのだけれど、年代によって相当違うという印象があります
70年代の末からラミレスは普通のサイズとか、松とかいろいろな事を始めたよね。
そうですね、650ミリを作るようになりました。松も使い出したし。
と、いろいろやってくれたけれど、結局、ラミレスの全盛時代は72・73年頃までの様な気がする。
杉?
杉。それからサイズを大きくした松というのも60年代のはじめはあったんだけど、
ああ、わが師匠がもっている・・・
そうそう、あのタイプはなかなか見ないけど。
Kさんが、60年代の松・ハカランダを・・・
60年代に(松が)あったんですか?
ホセ・ラミレス3世は最初にサイズを大きくすることから始めたんだよね。それから、少し経って米杉も使い出した。同時にではないらしい。一番有名になったのは米杉の大型ギター。
今日ここにはないですけど、60年代の物でローズのも結構あるのですね、
うん、ある。
60年代のものは、ハカランダでもローズでもラミレスは同じ価格でしたね。
あの頃は(ハカランダだローズウッドだのって)そんなに騒いでなかったからね。またラミレスは本当にいいハカランダは使ってなかったのかも知れない。わりに板目っぽい物が多かった
確かに60年代のいいラミレスと云われていても、あの頃のアグアドとかそういう楽器のハカランダとは違いましたよね。
そうそう、そういう感じではなかったね。
全然違います。
もっと何というか・・・墨流しの様な、まあ、模様とすれば派手だけど。一番喜ばれるのかも知れないね。
ええ、板目が。
ああいうものに板目、柾目というのかよく判らないけど。
ラミレスは確かにそうですね。
うん、結構模様の派手なのが多い。(資料を見せながら)これがブラジリアン・ローズウッドすなわちハカランダなんだよね、材木屋のホームページにあった、
板目、柾目、ああこういうのでも柾目なんですね。単純には云えないのですね。
伝統的にいい音のするハカランダって云うのは、見た目、あんまりハカランダっぽくない物の方が多いよね。
あ〜、こういうの出ないものですね。サントス・エルナンデス42年
さもなければ、真っ黒に見えるとかねアグアド64年
ここにあるカセレスですが、ローズの様に見える・・・松井さんがすごくいいハカランダだと、
ああ、あれはいい。こんなふうに木目の見えないやつね、
ええ、アグアドなんかもそうですね。
そう、これだ。ハカランダマニアの好まない様なものがいいんだよ。
ちょっとハカランダの楽器を並べてみましょう。
   
  楽器を並べる間、本や資料を見ながらの話が続く
   
(材木屋のホームページを見ながら)こういう木があるんだ。リオグランデ・パリサンダー・・・
ローズウッド?
いや、別の木らしい。インディアン・ローズウッドをパリサンドルと呼ぶって云うのは、ギター業界だけなのかも知れないよ。
するとパリサンダーとインディアンローズウッドって云うのは全く別物だと。リオグランデ・パリサンダー、これはどこですか?
中南米、リオグランデだから、
メキシコとアメリカの国境にリオグランデ川っていうのが・・・
   
  (リオグランデとは「大きな川」という意味で、メキシコにも南米にも数箇所その地名がある)
   
これは、中南米からアマゾン一帯に生息していると。地図が赤く塗ってある所だ。
   
  (ギターの準備中)
   
ハカランダでもいろいろ並べて見たいんだ。オットー・フォーウィンケルも出してみよう、これが全然違うすごい寝かしたハカランダだという事なのですが、ネオハカではという話もあるのですが・・・「ま」さんに判断して頂きたいのです。ネオハカという言い方もおおざっぱですが。
ネオハカという言い方もギター業界独自のものだね。材木関係を見るとそんな言葉は出てこないから。
今はネオハカという言い方は無くなっているのかな。
(オットー・フォーウィンケル見ながら)でも、これはハカランダ独自のやや緑がかかっているでしょう? 時間は経っているね、
   
  (ギター並べて)
   
松井さんの「Dori」(石川鷹彦プレミアムモデルの第一号)もこういう感じだね。これは本当にいい材だ。光の加減でやや緑に見える、やっぱりオットーさんのも同じ種類ではないのかな。
ミセス石川が、明るい所で見ると、この色がとても綺麗だとすごく気に入っていらっしゃるのですよ。
例えば、マーチンとかのハカランダマニアはね、多分このケヴィンの様なハカランダは選ばないと思うんだよね。
ああ、真っ黒なのはね。確かに・・・
ハカランダって云うのは、それぞれに違う顔をしているから人気があるのだと思う。
ああ、違うからこそ。
そう、それぞれに縞模様がね、それで人のをパッと持ったとき、ああ自分のだ、ということがすぐに判る。表面板だけでは判らないもの。
せっかくだから、王様のアグアドも出しましょう。
う〜ん、これだけ並ぶと壮観だね!
   
  7〜8本のギターを裏向けて並べる、一同少し興奮状態
   

後列左からベレサール・ガルシア、ケヴィン・アラム、オットー・フォーウィンケル、マヌエル・カセレス
前列左からジョン・ギルバート、アグアド、松井邦義Dori、パウリーノ・ベルナベ

いや、なかなか無いですね、これだけ並ぶのは。裏だけ見て私はだれでしょうクイズ・・・(笑い)すごい。
アグアドを見て)
いや、これはまた縞がないんだよね。
アグアドっていうのは、すごい材料持ちだったのでしょうかね。
わざわざこういうのを選んだのだね。
ハウザーはまた違いますよね。二世とか。
ハウザーはそうだね・・・
ハカランダ使ってます。でも50年代のハウザーはハカランダ少ないです。
そう?
意外とローズが多かったと思います。フレタ一世もそうですね。
うん、フレタ一世もローズが多い。ハカランダは少ない。
ケヴィン・アラムの様に最近の製作者でこういうハカランダ(真っ黒)を使う人は珍しいのではないでしょうか、どこから探しているのかなって・・・というのは、こういうハカランダを使い始めたのがここ1〜2年の事なのです
最初ハカランダで頼んでいたときはこういう物ではなかったです。急にこうなったのです。
そう、どこかで調達したのだね。
黒くなってから、これは3本目なのです。
仕様書は?、このネックも気になる、ここに縞があるし。
まだ届かないのですが、彼は事細かく書いてくれるので楽しみです。注目ですね。
   
  並べたギターを見て
   
これが全部ブラジリアンと云っても
でも、この中で、いかにもこれ見よがしのハカランダっていうのは、さすがに無いね。
さっきの「ま」さんが仰っていた柾目のね。
ほら、昔、俣野なんかで、よくあったやつ・・・
合板のハカランダですよね
えっ!、それ何ですか?初めて聞く言葉ですが??
このへんが近いですか?(棚から一本取り出す)
ああ、近い。
そう、いかにもハカランダ・・・
しかもこれがもっと全面に流れている様なやつもあった。
「ま」さんのアグアドはもっと黒いですか?
や、こんな(65年のアグアド)感じかなあ・・・
やっぱり黒いですね。
やっ、角度によるけどもっと黒いかも知れない・・・もう少し、濃い。でもこれのほうが綺麗かも知れない、細かさが。これはアグアドの中では縞が見える方かも知れない。
そうですね、もっと黒いですものね。墨のようですね。
こちらはサントス、これも黒いね。でもこれは、はっきり縞が見える。これはベラスケス
で、50年代のベラスケスはすごくいい材料を使っていると思う。まだそんなに長いキャリアではなかったと思うけど。
ええ、まだね。
まだあったんだね(材が)。多分、いくらでもあったのだと思う。
見る目さえあれば調達できたと。
そう、見る目と投資するお金があったら。マーチンの生産型でハカランダをやめたのが69年か何かだった。
   
  更にデヴィット・ラッセルの使用していたギルバートを出す
   
いや〜、これはハカランダマニアが泣いて喜ぶ・・・色もいいし、模様もいいし、
ハカランダマニアには、これが一番でしょうね
見た目が大切な人には絶対にこれ。
いや〜、改めて壮観ですね〜。
ハカランダ8本か、確かに。
こういう風に並べたのは初めてですね。
本当に壮観ですね、歩くのコワイですけど・・・、こうやって見ると本当に色とか柄とか、木目?それぞれに違いますね。
これがローズウッドだったら、皆同じ様に見えるからね。いま蛍光灯の下だからこうして見えるけれど、昼間だったらもっと綺麗だよ。だからギターの写真集なんかを出すときは、いろいろとライティング変えて撮ったほうがいいよね。
 昔買ったヴァイオリンの写真集があるのだけど、ヴァイオリンっていうのは、裏がメイプルだから、これとは違った意味で模様がライティングを変えると縞模様が写る、縞の位置がずれる。
立体的に見えると。
そうそう、そしてヴァイオリンの裏板というのが同じく一枚一枚、全然違う、一本一本、裏板を見て特徴が出るわけ。だから、ヴァイオリンのコレクターはまず裏を見る。
ハカランダもやっぱり違いますよね。以前、今井さんが仰っていたのですが、メイプルは見てくれの綺麗さ、縞模様の有無とか、バーズアイとかありますが、音との関係は無いとの事ですね。
そういってたね。だけど縞模様が無いとあまり遣う気がしないと・・・
でも今井さんの工房に何度も伺いましたが、材を見たとき、見てくれと音が、どんぴしゃかと云うとそうではないのですね。あるドイツの材のオーナーにこれで作ってくださいと云われて、(見た目)最高のハカランダを預かったのだけれど、実はぼこぼこだったと・・・
外観と数が少ないのと、楽器の材としていいものかは・・・
例えば、これとこれで作ってくださいと云って、最高と思われる材を 持っていったとしても、これでは全然だめだと云うことが、実際にあるのですね。ある専門店が某製作家に最高と思う材料で頼んだら、断られたという話もある し・・・それって、やはり組み合わせの問題なのでしょうか。
さっきの材木屋のオーナーの話だけど、例えば、材木屋として一番いいというのは、価格が最高という意味ではないのかな?
割れないという意味もありますか?
どうだろう、まあ、価格をつけるとしたら最高ランクという・・・数が少ない訳だし。楽器以外の家具の用途とか、稀少価値とか。楽器としていいかは、また別の事だから。一番値段が高いから、一番いいんだよと。でもわからないよね。楽器としていいかどうかは。
じゃそれは家具にすればいい?
家具にしていいかどうかは家具を使う人の好みだし、あと家具職人の好みとか・・・
最高級っていうのは見た目ということですか?
かも知れないですねぇ。

 

・・・つづく・・・
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