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● 鈴木大介ギターエッセイ パート22

春・櫻・・・新緑・・NHK-FMの収録も始まり、力をためている大介さんです。
そういえば今週の「Yomiuri Weekly」54頁に何故か、くまちゃん模様のエプロン姿も初々しい?大ちゃん・・・オーストリア留学中に覚えたキューバ風ライスのレシピを紹介しています。
「Men's Ex」4月号にも出ていたし、紙媒体への露出も多くなってファン層拡大中!!


春ですね。

春ですが、最近よく話題になるのは東京での桜の開花の早さです。昔、僕の通っていた高校では、伝統的に新年度最初の授業は近くの三ツ沢競技場周辺に花見に行く、あわよくば担任教師がひとりにひとつ、ブリックパックのジュースをおごってくれる、という行事が慣例となっていました。だけど、今みたいに入学式まで桜が保つかどうかだと先生も余計な散財はしなくてすむものの、なんかときめかないですよね。新学期とかね。

そういえばその高校の世界史の先生が、「僕はいつも学校へ来る道すがら木とお話ししています。今日もね、『木さん、木さん、こんなに空気が汚れていて木さんもね、生活が、光合成とかがね、たいへんでしょう?』って聞いてきたところなんですよ」と言っていました。彼が木の生存権主張の抗弁を聞けたかどうかは定かではないけど、今こそ、その先生に、どうして桜はこんなに早く咲くようになってしまったのかを桜の木本人に尋ねてもらいたいものです。

ところで、この間髪を切りに行ったらいつもの美容師さんが僕をチョット違う人にしたがっていた。
「どうします?」
「最近無精髭もあるのでワイルドな感じで・・」
「あ~、ゲイみたいな感じですね」
「いや、それとはちょっと違って、でもやっぱりさっぱり目の・・」
「あ~~、清潔なゲイみたいな感じね」
「いやそうじゃなくて・・・」
どうしてなんだろう。
ちなみに、その髪を家で洗って自然に乾かしたら妻に「少年アシベ」といわれました。

桜の木を見て、僕が思うのは、少し悲しい話だけど自分はあと何回くらいこの桜を見ることができるのだろう、ということです。後ろ向きなことだけじゃなくて、桜がきれいに咲けば咲くほど、自分はこの感動をあと何回体験できるだろう、今までに見た桜の感動は覚えているだろうか?と問いかけてしまいます(もちろん、桜の木さんに、じゃなくて自分にね)。昔、病気の父が散歩がてら僕の下宿を尋ねてくる道ばたに、それは見事な大きな桜の木がありました。僕は彼には病名を伏せていたけれど、きっとそこを歩くたびに彼自身が、「これが桜の見納めかなぁ」と感じてたように思われるのです。以来僕も、桜が咲くと一年を振り返り、少し感謝して、絶対来年もきれいな桜をみてやるぞーっと思うのです。

で、桜もきれいだった葉山のコンサートのリハーサル写真。

葉山にて

リハーサル風景


アンコールで弾いた「イパネマの娘」はラファエル・ラベロ(ハファエル・ハベロ)スパイスをふりかけずにもっとオーソドックスにした方が良かったんじゃない?とマネージャーに言われて一瞬がっくり来たけど打ち上げでみんなに「そこが良かった」と(ただ、みんなラファエル知らないとおもうけど・・・まあ、とにかく)絶賛されて3分で復活(簡単な奴)。
それにしてもラファエルだって33歳で死んじゃったんだから僕の桜の話も大げさじゃないよね、と今回はすこしセンチになってお届けいたしました。