（A Collection of Fine Spanish Guitars　を見て）この楽器、近いですね。66年。今回のTさんの楽器と。

おぉ～

これはいいですよ、多分ね、これに似てたと思います、でもこれヘッドにラインがないなぁ。

え、ラインがあったの？　ラインのあるベラスケスって覚えがないな。

この楽器、指板のサイズが54ミリとか広いんですね。こんな感じです。弦長650ミリ。雰囲気はこういう感じですね。もう少しちょっと色が深くて。

そうだよ。もっと黄色っぽいんじゃない？　ベラスケスって割に…。

「な」くんの方が長く見ているから、

こういう色？

色はこんなですよ、でももうちょっとこう杢があったような…ハーゼル（木目に直角う方向に入る斑、蝶の意味）が、特に下に向けて、こう、わーっとあって…節という感じの…

これもそうだ、ハーゼルが入ってる。

ハーゼルですよ、

下がまっすぐで…そうかよく見るとよく似ている。

つながっているからね、

もう少し横にあったけれど、すごく似てる。

これもやっぱりラベルにナンバーないね、で、装飾の、ロゼットの周辺とか色はついてた？

色はね…

色は黄色っぽい感じ、ハウザー二世と全く同じ。

これはもともとグリーンですけど色が抜けて、

そうそう、こんな感じ。

そうか。

色、そうですね。これ緑なんですね。

緑というかもとは青なんかも知れないけどね。ほらニス塗ったら黄色くなるとか。

ところで、あのベラスケスはスムーズにまとまったの？

ええ…そうだ、あのベラスケスはここで弾いたときよりも持って行ってよくなりましたよ。

ほう。

劇的に変わりましたね。　ハウザー系の楽器はいいのでしょうね。気候と合うのか。

そうか、北陸では。

ハウザー系の楽器はこちらで弾くと、ともすれば拒絶される様な感じじゃないですか？

結構音楽しづらい…

うん。

ハウザーは本当に実力のある専門家向けの楽器なんだよ。一般愛好家には荷が重い。

このベラスケス使っていたギタリストは、リサイタルでベラスケス使うと、「ハウザー二世ですね」ってよく言われたと言ってましたね。

ベラスケス知らない人はハウザーに見えるかも知れない。

ああ、そうかも。ブリームもベラスケス使ってましたっけ？

あれは…ベラスケスだと僕は思うけどね。あのロマンチック・ギターっていうアルバムはハウザーかベラスケスかちょっとわからない感じ。ベラスケスっていうのはもうハウザーそっくりだから…コピーといったら失礼なのかも知れないけど…

そうですね。ハウザー1世モデル。

何かを真似て作ったものではベラスケスが一番水準高いかな。

いいですねえ。

ある意味では本家ハウザーよりいい。大きな声では言えないけど、2世よりいいかな。

それはまあ…（笑）
ベラスケスは自分では決してハウザー・モデルとか言わないのがいいですね。何とかモデルとか。ハウザー三世がブリーム・モデルだの何とかモデルだのいっぱい出したのはちょっとええー！と思ったけど。

そんなのあるの？

マヌエル・ラミレス・モデルとかいっぱいありますよ。

ブリーム・モデルって言うのは？

15年ほど前にあったんです。

ハウザー三世、今たくさんモデルありますよね…

もう、すごいですよ。

ということは、ハウザー三世のそのまた弟子とかいるのかな？

いま娘が作ってますね。

でもハウザー三世が子供の頃にもいたよね、弟子が。

二世の所にいたはずですよね。

三世より年上の兄貴みたいな。

これは間違った情報かも知れないけど、ハウザー三世の先生はヘルムート・ブッフシュタイナーという話も。

ああ、それ聞いたことある。これはブッフシュタイナーがハウザー工房にいたという意味なのかな？

またはよそに弟子に出したという…ブッフシュタイナーは今オーストリアにいるらしいですけど

あ、そうなの？

ええ。

ブッフシュタイナーは70年代半ばに立て続けにいくつか見ている。その後はあんまり見なかったな。

そうですね、ベラスケスも一時プエルトリコに戻ってエル・クラシコというラベルの。60年代のベラスケスでも中米製作物があったんです。

ほう、

以前見たことがあって、そしたら意外によくなかったのですが、そのころはなぜだかわからなくて…

カナダ時代のメンヒみたいに？

そんな感じですよね。材料もあんまりよくなかったし。

多分工房に弟子がたくさんいた時期なんだよ。

そうですよね。

ブリームのディスコグラフィを探す。

ロッシニアーナを入れたCDがあってブリームが抱えているのがハウザー一世の様なベラスケスの様な。LPのジャケットだからすごくよく分かるのですけど。

ディスコグラフィ見てるとやっぱりベラスケスっていうのはないなぁ…

この中には出てこないですよね、ベラスケスって。

ジャケットの写真で見るとベラスケスだと思うというのはあるのだけど、その解説にはロベール・ブーシェ使ったって書いてある。

ああー…

北陸の先生が「ブリーム、ベラスケス使ったやろ？」って言ってました。

あっ　言ってました？

使ったかも知れないけど、レコードとして残ってないのかなあ？　こうやって見ると。出てこない。

ロッシニアーナとソルのグランド・ソナタ入れているのはベラスケスの古いのだというのを聞いた事あるのですけど。

…でもこう見て、ベラスケスっていうのが見あたらないんだよ。

僕が云っていたLPはRCAから出ていたのでジュリアーニのロッシニアーナ2曲とソナタで…ロマニロス、比較的新しいので73年、

73年…ああこれだ…73年ロマニロスだった。

ロマニロスでしたね。同じ年にジョンのアグアドで録音してるのだっていうのがあって。このウォルトンのバガデルとか弾いてるのがアグアドなんですねえ。

「70年代の…」というアルバムね。

そうです、現代物弾いたやつですね。アグアドでやったのはこれ1枚なんですね。

だけど面白い写真があるよ。ブリームがアグアドを弾いてジョンと合奏しているやつ。

あっ、これですよねえ。

ジョンがフレタで、これが例のアグアドだ。このフレッチングが（笑）

それでよく行けますよね、あの頃狂ってるのが多い中でも、より突出してたわけですよね（笑）

面白いのがあるよ。マヌエル・ラミレス1968っていうのがある。これはどう理解すればいいのだろう？

えっ？　マヌエル・ラミレス1968ってそんなものあるはずない。

おかしいですね。

でもホセ・ラミレスを使ったっていうのもおかしな感じがするし、なんだろう。

こういう記載があるということは全部正しいとは限らない（笑）

1968年といえばルビオを使っていた時期だな。

そうですね、結構録音でもルビオ使っていますね。65年、66年、67年…あっこれはリュートか。

うん、ルビオのリュートも使ってたよ。金属フレットだったり。それからロマニロスが70年代からはぐっと多いね。

73年の、例の…

うん、あの楽器日本にあるんだよね、確か。あの前後からブリームはロマニロス使うことが多くなったね。それから60年代は結構ブーシェが多いね。それと、ハウザーも使ってるんだね。

一世ですね、有名なバッハのリュート組曲一番二番はブーシェの60年。

うん、あれはブーシェだよね。ブーシェの音がするもの。ウェストミンスターのバッハ弾いたやつはハウザーなんだね。

ウェストミンスターの時代…バッハリサイタル。ああこれだ、すごくゆっくりしたシャコンヌの。

そうそう、16分位かかっている。

ハウザー47年、これは珍しいですね。40年代って大体珍しいですよね。

47年ということは一応戦後になって作ったことになるね。

ええ、時代的にはそうなんだけど40年代のハウザーって僕は見たことがない。

うん、ドイツの40～45年まではギターどころじゃない…ブーシェ60年・・・

ブーシェ60年…僕が最初にみんなに乗せられて買いそうになったのはブーシェ1960年でした。

買いそうになった？　ホントに？　そんなことあったんだ。その頃いくらくらいだったの？

250万。

いや～、買っときゃよかったのに。

いいブーシェだったんですよ。きずはあったけどオリジナルでね。ケースもちょっとアランフェスケースみたいな感じで雰囲気のあるケースでした。

そんなケースあったっけかな？

後にも先にもそれ1本、もう見たことないです。

その時一大決断をしていれば…

ええ、1979年？　の話。

今では3倍だな。

楽器はみんなうなって、この楽器は…さすがにブーシェは…という感じだったのです。

つづく