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● 鈴木大介ギターエッセイ パート14

早いもので今年も半分終わってしまいましたね。今年になって、いつ会っても、「忙しい、忙しい」、「明日とあさっては全くプログラムが違うし・・・」「○○日はぜーんぶ新作だー」等々大活躍中の大介さんです。今年後半もこんなでしょうか・・・


いよいよ関東地方も梅雨入りです。楽器を弾くみなさんはたいへんな季節となりました。僕は本来晴れ男なので演奏会の日は梅雨だろうとなんだろうとたいてい晴れます。ほんとです。降っていても途中でやみます。それでも降ってたら、乱暴な言い方で恐縮ですがそれはぜんぶ共演者のせいです。晴れ男、雨男にも、力の強弱がありまして、現代音楽の大巨匠である某フルーティストなどは、強度がかぎりなく10段階の10に近い雨男で、この方の時はさすがの僕も、作曲家の猿谷さんていう強力な晴れ男と力をあわせたけどぜんぜんかなわず、雷雨とにわか雨に涙したのでした。そのフルートの巨匠いわく、「俺が笛吹きゃあ、とたんに大雨だ。いちど乾期のサバンナで雨乞いに挑戦してみたいくらいだよ」とのこと。やっぱり巨匠はスケールが違うよね。

そこでここ数回の仕事の日を例にとって僕の晴れ男度を検証してみましょう。
5月10日:清里でBSクラシック倶楽部の収録。快晴。
  12日:GGサロンで西村君とのデュオ。快晴
  22日:九州交響楽団で「ある貴紳」。曇り
  23日:同上。昼から夕方雨、開演前から曇り
  31日:天羽さんとデュオ。雨が降ると言われていたけれど、天羽さんが前日に、「私は晴れ女ですので明日は絶対傘はいりません、鈴木さんが雨男でない限り」とおっしゃるのでおおぶねに乗った気持ちで傘を持たずにいったら、やっぱり降ってきたけど、開演前にあがる。
6月 3日:原宿のサロンでフルートの金井さんとデュオ。快晴
6日:岡山で古部さんとデュオ。二回公演で、マチネはぱらぱら降っていたがのちに晴れ。傘なしで過ごす。
7日:松山で古部さんとデュオ。晴れ

ということは、演奏中に降っていたことはここ1ヶ月を例にとってもほとんどないわけです。オーケストラの時は、100人以上いるから、なかなか難しいですけれど、かなりの打率ですね。

共演者の方も、自分が晴れ男、晴れ女だと、雨が降ったら全部人のせいにするので、気をつけないといけません。僕のまわりには晴れの人が多くて、なおさらです。

ところで、上記のスケジュールを見ていただいてもおわかりの通り、今年の鈴木はデュオ、コンチェルト、そしてたまにソロ、みたいな感じになってきました。中でも最近急速に増えつつあるのは、正統派の実力を備えながらも遊び心のある共演者とのデュオ・コンサート。デュオというと、個性のぶつかり合い、打々発止、といった感じで形容されがちですけど、僕らがやっているのはそういうのではなく、相手の個性をリスペクトしながらも自分のキャラクターを生かしていく、個性発揮音楽共存型デュオです。少し前までは、相手に遠慮しすぎてしまって、終わってみたら伴奏しているだけだった、という公演も時々あったのですが、相手の音楽を楽しんで自分の技術や音楽を生かしていくことが徐々に出来るようになって、いつのまにかいろいろなデュオのかたちができあがっていました。

たとえば、オーボエの古部さんとのデュオは、イメージとはうらはらに(???)かなり仕事人間な二人が、いつになく演奏、宴会ともに思いっきり羽根のばせるぞ、という公演です。そう思ってるのは僕だけかと思っていたら向こうもそうだったので、岡山&松山ツアーは面白かったです。だんだん悪のりしてきて、藤井郷子さんの「daydream」という曲の中でフリー・インプロヴィゼイションのコーナーがあるのですが、「007」はとびだすわ、ご当地ソングはでてくるわ、お客さんも笑いでつっこみいれてくださって、いったい僕たち何だっけ??状態。そのうちみなさんの街にも伺いますのでお楽しみに。

 ソプラノの天羽明恵さんとは、王子ホールのクリスマスコンサート以来二回目の共演でしたが、その間にお互いがお互いのステージを見に行ったりしていて、以前よりずっと距離が近づいた感じです。ヨーロッパをはじめ数々のオペラ劇場で活躍中の天羽さんは、舞台に立つと全身から魅力を発散して客席をそれだけで幸せにしてしまいますが、歌声をきくとさらに聴衆が引き寄せられてしまいます。こちらも、伴奏がどうこう、というよりはステージや客席を満たしている音楽や雰囲気、エネルギーと、すべてのことに集中する感覚を養われます。テノールの市原多朗さんにも、同様に、サントリーホールの大ホールでも、客席の隅々までhappyを伝えることが大切なのだと教えて頂きました。

デュオが遊べるようになったのはここ最近のことですが、やはりそれを教えてくれたのは香津美さんでした。香津美さんはあいてが誰であれ(?)その場その場でワン・アンド・オンリーなその人との空間を作ってしまえる人です。僕も早く、香津美さんをも愉悦の境地に誘えるような一期一会の演奏家になってみたいものです。

 そんなこんなで、私のデュオ遍歴はまだまだ続きます。これから夏にかけても、ヴァイオリンの久保田巧さん、サックスの須川展也さんといった、新しい共演者の方たちと、新しいレパートリーを開拓する事になっていて、また新しい自分を発見できるのでは??と大いに楽しみな今日この頃です。
そんな鈴木のデュオ好きにいち早く注目したのかどうかは不明ながら、NHK-BS2で朝8時5分から放送されているクラシック倶楽部の「ジャパン・シリーズ」では、ヴァイオリンの加藤知子さんやチェロの上村昇さんの番組に共演者として登場させて頂きました。お寺をはじめとする伝統的な日本建築のなかで演奏する「ジャパン・シリーズ」ですが、6月27日8:05~9:00には僕がソロや、香津美さんとのデュオ、それからフルートの高木綾子さんと共演した番組が放送されます。

 要チェックですっ!!!(自分で言うほど。)