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● 鈴木大介ギターエッセイ パート17

10月に発売された新作CD「La Catedral」も絶賛発売中、演奏活動も絶好調でますます忙しく活躍中の最新エッセイ!!京都の美しい紅葉と共に・・・


毎年、10月11月に嵐のようにやってくるコンサートラッシュを、一年を通して均等に配分できると、掃除機をかけるスペースを確保するために書類の整理をするだけで半日を費やし、それでも部屋の概観は変わっていないという惨事を招かずにすむと思うのだけど、どうにかならないのですか?ぶつぶつぼやいているときっとマネージャーに、「早く好きなときにコンサートができるようなビッグ・アーティストになりなさい」と言われるのがおちなので今年も黙々とせわしないコンサートの日々を送っています。

ただ、さすがにこういう状況が3年も4年も続くと、だいたい予想はつくので、健康管理とか、ペース配分は上手になってくるものです。宴会は控えめにする、とか、睡眠時間をコントロールする、とか、たわいもないことも含めてだいぶセルフコントロールができるようになって、いやー私も大人になったものだねーと思っていたら、あまりに一心不乱にマイペースを貫き続けるので、友人達からはつきあいの悪いやつと言われ、行きつけの飲み屋さんからは不思議な文体の(怪文書みたいな???)お誘いメールがこのHPのメールアドレスに届き、挙げ句の果てに家の人からは「サイコ君」の称号を授かるに至り、ありがたくって涙もでません。やっぱ人間遊びが肝心ですよね。

しかしいいわけをさせてもらえば、9月からの一ヶ月間、シューベルトの「美しき水車小屋の娘」に頭を悩まし続け、いやーこれは編曲は簡単なようで難しいぞー、ドイツ語もこんなことならもっとまじめに勉強しとくんだったー、それにしても良くできてるなーシューベルトの音楽、しかし小川に入って命を絶つのは、さぞや苦しかろう・・・などと錯乱状態を過ごし、10月がすぎて11月はアランフェスだスペインものだと、ピアニストなら考えられない多角経営に脳みそもとろけてしまうものです。そういう極限状態にはいると(ま、これが極限だとすると私もたかがしれていますけど)自己防衛本能が働いて何故かストイックになるのです。

ぜんぜん話は違いますが、最近驚いた話。輸入盤で僕がエレキギターを弾いてるCDがあるのです!!!! 前から神谷百子さんにその存在は聞いていたけどこのあいだ京都に行ったときにそのCDを見せてくれたオーディエンスの方がいて、「うぉー、ど、ど、どこで買ったんですか??」と聞いたら「駅前のお店で売ってますよ」ということだったので池袋に行ったらほんとに売ってた!!いい加減にしてよ、ラヴィノビチ。わからない人(大多数だよね)のために説明しておきますけど僕が今所属している事務所の初仕事だった仕事で、マルタ・アルゲリチのバックのオーケストラでエレキギターを弾くって言うのが98年にあったのですが、そのときのライヴがかってにCD化されていて、大手レコード店の現代音楽コーナーに売っていてジャケにちゃんとエレキギター=鈴木大介みたいに書いてあるのであります!! おい!いくらマルタ・アルゲリチが共演だからって足もと見るなよ、だいたいアルゲリチのライセンスもとれてないんじゃないのか??という感じの、それはそれは記念写真をブロマイドにして売ってるみたいなやつであります。そんなことなら言ってくれればディストーションかけて歪ませてもっとギンギンに弾いたのに・・・。

清水寺

ところで京都ですが、実はこの11月に2回も京都へ行くという、たいへんラッキーな仕事をやっておりました。とはいえ仕事で行っている上に最近はサイコ君な訳ですから、夜な夜な河原町で飲めや食えやの大騒ぎはせずに、アンゲルブレヒトのドビュッシーなんぞ聴きながらホテルの近くを散歩しておりました。この時期は夜間拝観のお寺も多く、紅葉のピークには早かったのですが結構楽しめました。今時の中高生は修学旅行で京都に行くとバスじゃなくてタクシーで観光することもあるので、タクシーの運転手さんがやたら話題豊富で、僕が乗ったタクシーの運転手さんなんか陰明師安倍晴明の生まれた年まで知ってるし、わかってるつもりでも時代はどんどん進んでいます。そのようなわけで今回は京都の写真をいくつか。

知恩院

日向大神宮