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● 鈴木大介ギターエッセイ パート21

今年の桜は早いですね。この春は大介さんは、充電を目一杯するんだ・・と云ってました。春のエッセイ届きました。4月15日のNHK-FMもぜひチェック!!


みなさん、お花見の季節です。まだちょっと気温は低いですね。寒がりで花粉症気味な僕はぜんぜん無理です。それに加えて、昔花見で飲み過ぎて菊名の坂を転げ落ちて以来、気合いの入ったごっつい花見はちょっと遠慮気味です。酔ってると受け身とらないから思いっきり頭打ちます。

最近演奏会でヴィラ=ロボスの曲をよく弾いています。実は、僕は昔からヴィラ=ロボス大好きで、家でこっそり弾いて楽しんでました。アレッサンドリアのコンクールの時も、本選はヴィラ=ロボスのコンチェルトでしたし、ショーロスの連作やブラジル風バッハ、弦楽四重奏を聴くのも好きです。

でも、なんで演奏会では弾かなかったのかというと、ちょっとこわかったんです。ヴィラ=ロボスの曲には、20代の僕が必死に封印していた野生、理性によってコントロールされた演奏を根底から揺るがす動物的本能を呼び起こすものがあるからです。

僕はもともと暴れん坊弾きまくりタイプでした。ま、ノーコン速球派ですね。それでずいぶんコンクールなんかでは批判もされました。エリオットが生徒にしてくれたのはきっとそういうところを天才肌の彼は見抜いてたからじゃないかな、と思います。でも、エリオットのところに行ったのはコントロールを学ぶためだったし、エリオットのアシスタントのホアキンも、キューバ式のコントロール方法をすごく理知的に教えてくれて、留学から帰ってきた僕は、メディア・カームの酒井さんもひっくり返るくらい頭脳派コントロールピッチングになっていました。で、それからのいろいろは見ての通り、なわけですが、そうして眠らせていた凶暴さが、体の中から消えてしまうことは決してありませんでした。

それで、自分で言う事じゃないですがすごく勉強して、練習して、ようやく最近その獣みたいなもうひとりの自分が冷静な自分の言うことを聞いてくれるようになってきました。ずっと仲良くしてくれるといいと思っています。

そんなわけで、失われた野生を取り戻した僕の最初の演奏は4月15日の19時20分からNHK-FM「ベストオブクラシック」で放送されます。聴いてやってください。