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● 鈴木大介ギターエッセイ パート19

公約通り今月は2度目の更新になりました。大介さんはちゃんと12月27日日に原稿を入れていてくれたのに、管理人が追いつきませんでした。ごめんなさい。新しいアルバムのジャケット写真とってもよいですね♪
新年は早々にリサイタルも控え、気持ちも新たに活躍が期待されますね。今年もよろしく!!!


こんばんは。今年は久しぶりに穏やかな新年を迎えられそうです。みなさんはいかがでしょうか。
考えてみれば、去年も30日くらいまで「どですかでん」のマスタリングだったし、一昨年は盛りがついたみたいに宴会続きだったし、誘われると断れないからへろへろになるまで飲んでたんですよね。

それはさておき、みなさんもご存じかもしれませんが、2002年の2月はちょっとイベント続きです。まず2日に、ポートストリングス横浜という弦楽アンサンブルのコンサートでジャン・フランセのギター協奏曲を日本初演します。みなとみらいの小ホールですから、バランスもいいんではないかと楽しみにしています。この曲は長年弾きたかった曲なのです。これから自分の定番にしようと思ってます。お洒落な曲なので是非見に来てください。

そして翌週9日には、お茶の水のカザルスホールでソロリサイタル。東京で完全に独りで弾くのは5年ぶりです。プログラムも気合い入ってます。「東京の音楽」というイメージで、映画音楽やジャズ、ブラジル音楽に接点を持つ作曲家の作品を集めてみました。普段はクラシックのコンサートホールに行くと、その中はウィーンだったり、パリだったりするわけですが、東京に住む人がライブ・ハウスに行くみたいな普段着な気持ちでホールに来て、いつの間にかコンサートが始まっていて、それでも帰りの東京は違って見えます、みたいなコンサートをしたかったのです。プログラムは以下の通り。
武満徹:エキノクス[
ハビエル・モンサルヴァーチェ:3つの幻影のファド
ラダメス・ニャタリ:ブラジリアーナNo.13
ローリンド・アルメイダ:3つの物語
1.あこがれの物語 2.霊感の物語 3.月の物語
エンニオ・モリコーネ:4つの小品
アストル・ピアソラ:5つの小品
渡辺香津美:アストラル・フレイクス
好きなものばかり並べたら、やっぱり前代未聞のプログラムになってしまいました。弾いててインプロに入っていきそうでこわいです。でも、とってもいい曲ばかりなので自分でも楽しみなリサイタルです。

このリサイタルに際して、いろいろなところで話しているのですけれど、僕自身これは当初予定していたデビュー・リサイタルにあたるものだと思っているのです。僕は、子供の頃からギターを弾いてはいたけど、プロになるという目標は漠然としていました。普通の高校生活、大学生活を送って、学生時代は遊ぶ金ほしさにバイトに明け暮れました。大学3年の時にコンクールで賞を取ってしまい、なんだか仕事が来始めたのでありがたくやらせてもらっていると留学の話がまとまって・・・そういう感じでなんとなくギタリストになってしまいましたから、これはとてもソリストとして活動するまでにはもっともっと勉強しないとなーと思っていたのです。実際、ヨーロッパの仲間達はみんな30歳くらいまではコンクール受けたり、ディプロマ(演奏家資格)とったりするのが当然、という雰囲気だったので、焦りもあんまりありませんでした。
ところが、帰ってきてみると武満さんに演奏を聴いてもらえたり、CDを出させてもらえたり、大きな事務所に所属できたり・・・と、人生の幸運が一気にやって来て将来が心配になるほどだったのです。そこからの5年間くらいはめまぐるしかったです。次から次へと知らない曲をさらわなくてはいけないし、大きなホールでコンサートさせてもらえるし。
97年のクリスマス・イヴの日に疲れて一日中家で寝ていたら夕方電話が鳴って、寝ぼけて出てみると誰かが99年の2月20日武満さんのご命日に1600席のホールでリサイタルをしてくださいと言っている。もう眠くてよくわからないし、仕事はありがたいので引き受けてみたら、翌年そのホールは東京オペラシティの武満メモリアルであることを知った、なんてこともありました。
その時香津美さんと共演させてもらえたのは、今でも自分の人生の中で最大の幸福だったと思うけれど、きっと武満さんが天国で「ずいぶん頼りない若者を世の中に送り出しちゃったな」とことの重大さに気づいて「香津美さん、あとはお願いね」といって出会わせてくれたのだろうと思いました。

早くデビューできてたくさんの偉大な共演者達に恵まれてしまい、刺激を受けて、吸収することが多すぎて消化していたら31歳になってしまいましたが、そのようなわけでカザルスホールでは自分がようやくほんとうのソリストとしてのスタートを切れるのではないか、と思っています。しっかりと目撃してください。

それから最後になっちゃいましたけれどアルバムがでます。
前のエッセイにも書いたけれども1月21日です(前回は日にちを間違えました)。ジャケット写真、久しぶりに顔でました。2000円です。聴いてください。