特別寄稿 鈴木大介ギターエッセイ
今や若手ナンバーワンギタリストとして活躍中の鈴木大介さんがエッセイを寄せてくれました。大介さんはエッセイストとしてもなかなかと、秘かにメディア・カームは思っているのです・・・時々気が向いたら寄せて頂いてシリーズにしてしまおうと企んでいます。
● 夏のおわりに・・・
日照時間の少ないままに、すっかり涼しくなってきてしまった。学生の頃のようにラジカセ持って海に行って、灼熱の砂浜で体を焼くというわけでもなく、花火大会の場所取りに燃えるということもなく、だから曇りがちでも何にも困らないのだけれど、ちょっと肩すかしを食らったような夏だった。ハーフスイングを取られて三振したみたいな感じだ。
そこで自分なりのイベントとしてはかなりせこいが、去りゆく夏を惜しむかのように、ギタレレを買った。ギタレレとはその名の通りウクレレとギターの合いの子で、弦は6本あるけれどギターより4度高く調弦される。
ヤマハに勤めている知り合いが、一昨年だかその前の年だかに自慢気に見せてくれて以来、ずっと欲しかったのだが、一時期表面板にハワイアンぽい椰子の木の絵がプリントされていたりしたのに気が引けて、買えないでいたのだった。最近になって、表面板が以前のように無地の木材にモデルチェンジされたので、購入意欲が再燃していたのだが、従姉妹に今年4才になる子供がいて、その子のためにキーボードを買いに行ったのがきっかけとなった。余談だが、今のキーボードの性能はすごい。4~5万も出すと、音色が素晴らしいのは当然ながら、DJ用のサンプリングまで備わっている。店で遊んでいたらハマってしまって、ブローウェルとかのレコーディングに使えないかと思ったくらいだ。ヴィラ=ロボスのエチュード10番とかにもDJ入ってたら面白いと思うんだけれど。とにかくあんなの使われたらプロも顔負けだ。で、それは4才の子供には高度すぎると思って、かなり機能の少ないモデルを買ったのだけれど、それでさえ僕だったら1ヶ月は飽きずに遊べそうだ。キーボード侮るべからずだった。
ギタレレを買って、何に使うのかというと、バーティーである。もともと僕は宴会とかサロンとかでギターを弾くのは苦手だ。聴いている人が近すぎて、弾いている最中も目が合いそうで怖い。立食だとこっちは座っていて向こうは立っているから、皆から見下ろされていて不安だ。それに僕は結婚式の披露宴等で人のスピーチを聞いたり、じっと座っているのが苦手な方なので、自分がギターを弾いている時もみんなおつき合いで静かにしてくれてるんじゃないかと思ってしまう。そういう諸々の理由があって、パーティーなどでギターを弾くのは憂鬱なのだ。
ギタレレは小さくて、持ち運びも便利で、宴会乱入にはうってつけだ。立って弾ける。座っても弾ける。楽器がおもちゃみたいだから、酔っ払った僕に、バッハ弾いてくれなんて誰も頼めない。職業柄、ギターを持つと、遊びの席でもマジになってしまいがちだが、ギタレレだと安心して色物道を突き進める。誰か鈴木をパーティーに呼んで下さい。
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7月17日 更新
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